前記事では、猫的町並みを構成する5つのエレメントの実践編として、①Path(パス)と②Edge(エッジ)の作成・設置について写真を交えながらお伝えしました。
Path(パス)は、キャットウォークなどの「猫用通路」。
Edge(エッジ)は壁や窓、ドアなどの障害物や境界線を指し、猫の逃亡防止対策として猫的町並みにおいて欠かせない役割を担っています。
今回は、5つのエレメントの実践編②として、District(ディストリクト)とNode(ノード)の作成法ついてわかりやすくお伝えしていくので参考にしてくださいね。
この記事でわかること
猫的町並みを実現するために必要な5つのエレメントは以下のとおりです。
①Path(パス)→道路
②Edge(エッジ)→縁(ふち)
③District(ディストリクト)→地域
④Node(ノード)→接合点・集中点
⑤Landmark(ランドマーク)→目印
今回は③District(ディストリクト)と④Node(ノード)の作成について解説します。
District(ディストリクト)は、用途がある場所を指します。
猫的町並みにおいて、ディストリクトには2つの種類があります。
猫的町並みにおけるディストリクトの作成について、以下のようにまとめました。
猫的町並みにおいてのディストリクトは以下の2つです。
1つ目は、とくに明確な役割をもたず、強いて言えば猫にとって娯楽となる場所です。
リラックスできる場所や刺激を得られるような場所をイメージしてください。
部屋を一望できる見晴らし台のような場所や外の景色が見える窓辺などが当てはまります。
2つ目は、食事場所や水飲み場、トイレなど、機能が明確になっている場所です。
なくてはならない、生きていくために不可欠な場所です。
猫のために設計した見晴らし台や窓辺をディストリクトとして活気ある場所にするためには、「そこから何が見えるか」をしっかり人間が把握しておく必要があります。
猫目線になって考えることが大切です。
また、ディストリクトは内部に入って行き活動することが前提です。
そのために、あわせてパスが必要であることを知っておいてください。
ディストリクトは、必ずしも遠くからその全体像が見えている必要はなく、中に入ることができ、その場の特質を確認できれば、必要十分条件を満たすといえます。
わかりやすく説明すると、猫のトイレです。
猫のトイレは、遠くからはっきりと見えていなくても、適切にパスが形成されているのであれば、ディストリクトとしての役割を果たすということになります。
よくある事例ですが、猫のトイレを隠すように考える人がいます。
これは理屈上問題ないのですが、排泄できたかどうかのチェックには不向きだと考えます。
猫トイレ専用の置き場は人が行き来する頻度の高い場所に設定しておくのがよいでしょう。
機能性のディストリクトは、人間が猫のお世話をしやすい形にしていきます。
刺激やくつろぎの場であるディストリクトは、もちろん猫だけがたのしめるものでもよいですが、できれば人間もそこに参加したいですよね。
猫という生き物はとても不思議な生き物です。
ずっと観察していても飽きません。
昼寝姿を見守るだけではなく、せっかくなら楽しんでいるところに同席したいと考えます。
上の写真では、猫ロフトと名付けたディストリクトが大階段を登った先にあり、外の景色も楽しめます。形の違う3つのパスのノードになっているので、ディストリクトはとても自然に形成されています。猫たちは2つのラウンジチェアの上で外を眺めたりしていますが、時々人間も座らせてもらいます。
生きていくのに必要な場所と娯楽の空間がディストリクトです。
ディストリクトは猫の密度が高くなるので掃除がしやすい強みがあります。
猫だけではなく私たち飼い主も一緒に参加できる空間だと楽しいですよ。
Node(ノード)は、交差したり集中したりする場所を指します。
猫的街並みをデザインする際に、最も困難で工夫することが要求されるエレメントはこの「ノード」です。
猫的町並みにおけるノードの作成について、以下のようにまとめました。
パスを数多く作成したとしても、起点と終点が1つずつしか選べない短いものであるなら、猫にとって非常に退屈に感じるでしょう。
パスとパスが重なり合い、猫が自由に飛び移れれば、そこはノードです。
(猫には飛躍力があるので、キャットウォークが交わらなくても、それはノードと考えます。)
私は猫の家を設計する際、集中点のノードとして、1.5畳くらいの場所に、パスが多く集まっている場所をよく設けます。(下の写真参照)
集中点としてのノードを床から高い場所に作ると見晴らし台になり、ディストリクトの性質を帯びるのです。
階段室は、1階と2階が交わる場なので、パスでありつつ、それ自体がノードの性質を持っています。
下の写真は多等飼育の家にある階段でよく見られる光景です。
ほかの猫、ほかの動物、人間たちの存在を確認しながら、階の状況を確認して、猫は登ったり降りたりします。
写真の猫階段は完全なストリップ階段で側壁もないため、階段上から周りを見渡すことができます。2階から1階に降りる際、猫は必ず上から4段目で立ち止まり、1階に降りてきます。
私はこれまで、建築士が猫のためにつくった家をいくつか目にする機会がありました。
満足がいく結果が得られていない事例では、例外なくノードの形成が不十分か、はじめから存在していませんでした。
猫の家をつくる初心者の場合は、ディストリクトをつくるよりは、集中点のノードを積極的に活用しましょう。
ノードを活用することで、自然とディストリクトになるからです。
広範囲に、様々な角度や家の中の軸線を意識してパスを形成できれば、自然にノードは生まれます。
よいノードはよいディストリクトになります。
猫的街並みを構成するために必要な5つのエレメントのうち、③District(ディストリクト)、④Node(ノード)について実践編としてお伝えしました。
どちらも猫的町並みには欠かせないエレメントです。
次の記事では、⑤Landmark(ランドマーク)の実践を紹介していきます。
「住居の中に猫的町並みを展開する」シリーズ4/5(2022.08.19)