完全室内飼育における猫にとって、家の中はすべてです。
私たち飼い主は、猫が猫らしく身体的・肉体的ともに健康で暮らしていくための環境を整える必要があります。
そのために必要なのが、前記事でお伝えした住居内に「猫的町並み」を取り入れることです。
猫的町並みに必要なのが、米国の都市計画家ケヴィン・リンチの著書『都市のイメージ』より著者がヒントを得た強力なツールである5つのエレメントです。
今回から3記事にわけて、5つのエレメントを用いた猫的町並みを住居の中に展開する方法をわかりやすくお伝えしていくので、参考にしてみてくださいね。
この記事でわかること
猫的町並みを実現するために必要な5つのエレメントは以下のとおりです。
①Path(パス)→道路
②Edge(エッジ)→縁(ふち)
③District(ディストリクト)→地域
④Node(ノード)→接合点・集中点
⑤Landmark(ランドマーク)→目印
今回は①Path(パス)と②Edge(エッジ)の設置と作成について解説します。
Path(パス)は、猫的町並みにおいてキャットウォークなどの「屋内にある猫用通路」を指します。
猫的町並みにおけるパスの設置について、以下のようにまとめました。
室内におけるパスは、規則性のある複数の種類を設置しましょう。
なぜ規則性が必要かというと、猫が混乱を招いてしまうおそれがあるためです。
とくに注意が必要なものは、階段状のパスで確実な規則性が必要となります。
25cmの段差のステップを設置した場合、すべて25cmに統一しましょう。
猫が途中で方向転換しても混乱しにくいです。
キャットウォークにはバイパスを持たせることが好ましいです。
多頭飼育している家では、猫が行き交うこともあるでしょう。
猫の喧嘩が発生しないためにもキャットウォークには猫が道を譲れるような工夫を用意しておくべきです。
縦方向のパスを作った場合、横方向のパスにつなげることを意識しましょう。
有益なパスとは、垂直方向への移動にあわせて水平移動できるものです。
床から高い位置にあるという理由だけのパスは、猫も途中で飽きてしまう可能性も。
よって、使い続けるには工夫が必要です。
猫を実際に飼育している人ならご存知かと思いますが、猫は勝手にパスを生み出します。
棚の上に並べた本の上を歩いてみたり、なぜかテレビの裏側を歩いてみたりと。
せっかくパスを用意しているのにも関わらず、「なぜ、そこをわざわざ歩くのか?」と思ってしまいますよね。
特性上、そのようにして無理やりパスを拡張していくようです。
気がつけば、意外なところにも抜け毛が落ちているなんてこともあります。
ここで人間がわかりやすいパスを目的地まで用意すると、無理やりな新規のパスの開拓は少なくなるようです。
2匹の猫が机の上や書類棚の上を頻繁に歩くので、その上空にキャットを設置しました。その結果、歩いてほしくない場所を歩く頻度が減少し、この増設したキャットウォークが既存のキャットウォークとノードを形成したので活発なよい遊び場となりました。
大量のキャットウォークは「掃除が大変そう」とイメージする方も少なくはありません。
しかし、わかりやすいパスを複数設置することで、掃除は比較的楽になるのです。
無理やりなパスの通行や新規のパスの開拓が止まることが関係しています。
わかりにくい場所にあった抜け毛が、猫が決まったパスを通行することによって、見つけやすい場所に移動するからです。
抜け毛の量は変わらないため、どうせなら掃除しやすい場所に抜け毛が集まる方が掃除しやすいですよね。
また、真夜中におこる猫の運動会もあらかじめパスを用意しておくことで、落下物の被害をある程度防げるといった役割もあるのです。
わかりやすいパスはキャットウォークですが、猫が人間用の床を歩くのは普通の光景です。
キャットウォークのみにとらわれず、床や階段、椅子、テーブルなどを猫に解放してパスを増やしてもよいでしょう。
Edge(エッジ)は猫的町並みにおいて部屋の壁やドアなど線上に存在する境界や障害物を指します。
猫的町並みにおけるエッジの設置について、以下のようにまとめました。
猫は範囲を拡張しようと、果敢に窓やドアを開けようとします。
猫の逃亡防止対策としてエッジは必要です。
エッジの役割を担うドアには両面サムターン錠を付けたり窓には逃亡防止の格子を設けたり、網戸の強化などが求められます。
普通のドア(レバーハンドルは空錠)ですが、猫に入ってもらいたくない部屋なのでサムターン錠を取り付けています。
人間が決めたエッジを猫に破られないように対策することは非常に重要です。
猫目線でエッジを探してみると、出隈(外側に膨らんだ角部分)があります。
ここは猫が爪研ぎを行う際に狙いやすい場所なので、金属製の出隈ガードで補強しておくと安心です。
猫を室内で飼う場合は、しっかりとエッジに気をつけて該当箇所の保護や補強をしましょう。
エッジ破りは重大事故であるといえます。
とくに外に出るためのドアや窓からの猫の逃亡は、猫の安全に関わることはもちろん、場合によってはもう帰ってこない可能性があります。
捜索にかなりの時間がかかった場合は、仕事を含めた日常生活にも支障をきたすでしょう。
また逃亡が長期に渡った場合、多頭飼いの家庭では他の猫と隔離する必要がある場合もあるのです。
よって、重大事故になる前に私たち飼い主はドアや窓からの逃亡防止対策を100%万全にしておく必要があります。
猫の逃亡を防ぐために、まず玄関ドアにはあらかじめ風除室的なものをつくり、玄関ドアに猫が近づかないようにするとよいでしょう。
窓は採光用の窓と換気窓で役割を分け、できるだけ「上げ下げ窓」を用います。
網戸が固定された上げ下げ窓は全開時でも猫は逃げられません。
もちろん上げ下げ窓特有の換気ポジションも安全かつ有効に機能します。
最近の上げ下げ窓には換気モードがあり、写真のような形でわずかな隙間が開くようになっています。この隙間から猫が逃亡することはないので、安心して換気ができるのです。
上げ下げ窓の開く部分(通常は下側)は外部に網戸が固定されているので、網戸をステンレス製、ペット用のものにすれば破られて逃げ出すことはないです。(スライド着脱式の場合は固定しましょう)
エッジは猫と住む家においても重要度が高い項目です。
従来の引き違い窓にとらわれず、窓を選択すれば、猫の逃亡に関して換気中でも安心して過ごせます。
また窓は猫にとって娯楽の場です。
うまく工夫することでエッジにネガティブな要素をもたせないようにすることが可能です。
猫的街並みを構成するために必要な5つのエレメントのうち、①Path(パス)、②Edge(エッジ)について実践編としてお伝えしました。
工夫を凝らして設置することにより、猫にとっても私たち飼い主にとってもさまざまなメリットをもたらす「猫的街並み」が住居内に完成します。
次の記事では、③District(ディストリクト)と④Node(ノード)の実践を紹介していきます。
「住居の中に猫的町並みを展開する」シリーズ3/5(2022.08.19)